〜続き〜
しかしながら、今、この国際的努力の成果が、拙速な議論のもとに反故にされようとしている。「ジェンダー」という用語の使用制限の要求は学問的に見れば非常識と言わざるを得ず、もしこのような要求をもとに、関連教育や男女平等政策への介入、男女共同参画社会基本法の骨抜き(内容の後退)、ジェンダー関係の書籍の排斥などが行われるのであれば、それは、「学問の自由」に対する侵害であり、国際的・国内的に積み重ねられてきた人々の英知に対する裏切りである。「男女共同参画」の英訳が“Gender Equality” であるように、両性の平等
について発言・思考するにあたって「ジェンダー」概念を用いないことなどおよそ不可能である。すでに国際標準となった「ジェンダー」概念を使用しないなどと決めれば、日本は世界に向けて有意味な学問的発信ができなくなるばかりか、侮蔑と嘲笑の対象となるであろう。
学問は真理の探究を通じて、広く人類の福祉の向上のために行われるものであり、「ジェンダー」概念は、そのための不可欠なキー概念である。今や学会においてジェンダー部会の見られないところは少数であり、どの学問分野でも従来の学問体系に対するジェンダー視点での批判的見直し(再構築)が進められている。多くの大学では、ジェンダー学あるいは女性学関連の教育プログラムが設置され、ジェンダーに関する共同研究が進められている。行政や女性センター、男女共同参画センターなどにおいても、男女平等・男女共同参画に対する啓発や教育プログラムが実施されている。豊かで公平で活力ある社会を築くこのような営みを破壊することは決して許されない。
日本女性学会は、他学会・研究機関、市民とともに、今後とも「学問の自由の擁護」と「人間解放に資する研究」への努力を惜しまぬ決意をもって、昨今の「ジェンダー」批判、「男女共同参画社会」揺り戻しの動向に抗議するものである。関連諸機関の適切な対応を期待する。
日本女性学会 第13期 幹事会
2005年7月16日